香川県さぬき市多和助光東30-1(旧 多和小学校)
[イベント] スケジュール:2023/11/11
更新日:2023/11/11
【日時】
2023年11月11日(土)
18時30分:開場・受付開始
18時50分:オリエンテーション
19時00分:観望会開始
20時30分ころ:終了予定
【内容】
オリエンテーション後、天候に合わせて天体観望を行います
【予定機材】
大型望遠鏡数台、小型・中型望遠鏡10台程度
【参加費】
大人500円
大学高校生400円
中学小学生300円
就学前児童無料、障がい者手帳お持ちの方無料
【募集組数】20組(70名程度)
【オリエンテーションの内容】
・今夜の星空のシュミレーション
・本日の天体望遠鏡の味わい方
・天体望遠鏡の見方・使い方説明
・夜間天体観望会での事故防止注意事項説明
【雨天・曇天時】
雨天・曇天時は別プログラムにて開催致します。
*台風など開催が危険と思われる天候の場合は開催中止に致します*
開催中止の場合は本サイトのお知らせ欄に当日、13時ころに掲示致します
【参加方法】ネット予約が必要です。*予約受付を終了致しました2023/11/11 13:45*
11月11日(土)の天体観望会で楽しめる星空(天体)を紹介します。
☆★今回の天体観望会での観察オススメ天体リスト
星座:ペガスス座,カシオペヤ座,こと座,はくちょう座
一等星:フォーマルハウト,ベガ,デネブ,アルタイル
星の並び:秋の四辺形,夏の大三角
星雲:アンドロメダ座大星雲(M31)
星団:ペルセウス座の二重星団,ペガスス座の球状星団M15,すばる
二重星:アンドロメダ座アルマク,はくちょう座アルビレオ
惑星:木星,ガリレオ衛星,土星,土星の衛星タイタン
11月中旬,季節的には秋深しという時期。そして来月には冬至を向かえます。
夕空はつるべ落とし。あっという間に暗くなってきます。本当に冬近しを感じる頃合いです。
観望会当日の日没は,17時2分。18時半からの受付の時間帯には空はずいぶんと暗くなっていて,(晴れていれば)いくつかの星々や星座が見えてきているかと思います。
まずは,その暗くなった夜空を見上げてみましょう。
上図は,観望会開始頃,博物館前の広場から南方面に体を向けて,空を見上げたときの様子です。(注)イメージ化したおおまかな図なので,実際の星の正確な位置関係を示すものではありません。
秋の星空は,一等星が一つしかありません。そう聞くと寂しい感じに伝わると思いますが,西側半分には,こと座のベガ,はくちょう座のデネブ,わし座のアルタイルの3つの一等星がまだ見えています。この3つの星は『夏の大三角』の星々。冬も近い時期でありながら,まだ夏の星が見えているんですね。そして,秋の夜空の唯一の一等星となるみなみのうお座のフォーマルハウト。この夜は,その4つの明るい恒星に,超明るく輝く木星,そして土星が加わって,寂しいどころか,けっこう賑やかな星空となることでしょう。
その中で,一番明るく目立っている木星は-2.9等。これは,一般的な一等星の10倍以上の明るさです。この木星を基準にして西(右)へ目をやるとフォーマルハウト→右上にいくと土星→もう少し右上にアルタイルと,周囲の星々の特定が容易になるはずです。
まあ,当夜の観望会は,主役のごとく威光を放つ木星と,観望会人気NO.1の土星。この両惑星の観望からスタートする可能性が高いでしょうか。
それでは,明るい方の木星からご紹介しましょう。
木星は太陽系第5番目,太陽系最大の惑星です。
望遠鏡で木星を覗いてみると,木星本体に数本の縞模様が見えてきます。
基本的に天体望遠鏡は口径の大きなもの(レンズや鏡の直径の大きい望遠鏡)ほど,詳しい部分までしっかりと見えてくるものです。ここでは,準備された大小いろいろな望遠鏡で木星を見比べてください。縞模様の本数,縞の詳細,木星本体の色合い,望遠鏡ごとにどんなに違って見えてくるか,じっくりと観察してみてください。
木星本体の左右に目をやると,小さな光点が3つほど目立って見えていると思います。この夜は,木星の片側に2個。反対側に1個見えています。
この3つの星は,ガリレオ衛星とよばれ,木星の数ある衛星の中でも特に大きくて明るいもの。ガリレオ衛星にはあと一つ,イオという衛星がありますが,観望会開始頃は木星本体の向こう側にあって,まだ見えていません。4個あるガリレオ衛星のうち3個が,最初は見えているという状況になります。
木星本体の片側(望遠鏡により左右あるいは上下が逆になる場合があります)に2個見えている衛星は木星本体に近い方からエウロパ,ガニメデ。反対側に1個見えているのがカリスト。エウロパは内部に膨大な量の海水があるといわれています。ガニメデは衛星でありながら,太陽系第一惑星である水星よりも大きな天体です。
木星の大きさは地球のおよそ11倍。そして10時間ほどで一回転(自転)します。地球は24時間で一回転。ということは,地球の11倍の巨大な惑星が地球の2倍以上の速さで自転しているということ。そのため,生じた遠心力で赤道付近が膨らんでいるんです。良く観察してみてください。木星は上下(南北)の縦方向よりも左右(東西)の横方向の方に膨らんで,やや楕円形に見えてるはずです。
また,今夜の木星は表面模様もしっかり観察してみてください。大赤斑(だいせきはん)という赤っぽく感じる目玉のような特徴的な模様が見えているはずです。この大赤斑の正体は,高気圧性の巨大な渦巻きだと言われています。大きさは地球がすっぽりと入るくらいサイズの巨大な渦巻きです。
さて,少し時間が経過して午後7時40分頃に,もう一つのガリレオ衛星であるイオが木星の端っこから姿を見せてきます。小さな衛星がちょこんと顔を出してくる,この時刻を覚えておいて,ぜひ望遠鏡で導入してもらってください。この時刻以降,4個のガリレオ衛星が見えることになります。
続いて,木星の右(西側)に見えている太陽系第6番目の惑星である土星。
土星は,その見映え,神秘感,どれをとっても天体観望会では人気NO.1の天体です。
木星に比べて土星は若干小さ目ですが,それでも地球の9個分の大きさを誇る大きな惑星です。また,環(輪っか)のあることで有名です。天体望遠鏡を使うと,その環も明瞭に見ることができます。神秘的なその姿をじっくりと味わってみてください。
土星の環は,小さな氷や小石からできていると言われています。
この環は年によって傾きが変わって見えますが,今季はけっこう斜め方向から見ていることになり,ちょうど麦わら帽子をかぶった頭を,横から見てるみたいな感じでしょうか。
土星に初めて望遠鏡を向けたのは,かの有名なガリレオ・ガリレイと言われています。1610年,彼は分解能の良くない望遠鏡で土星を見て,左右に奇妙なコブのようなものがくっついていると言ったそうです。性能の良くない望遠鏡であったため,環を『輪っか』として見ることができなかったのです。
土星の環を,初めて『輪っか』として観察したのは,オランダの天文学者ホイヘンス。ホイヘンスは,1655年,性能が向上してきていた天体望遠鏡を土星に向けました。初めて見る土星の環に,さぞかし驚いたのではないかと想像できます。それまでは,土星には耳があるとか,コブが付いていると言われていたのを,ホイヘンスがその正体を見破ったわけです。
ついでに,ですが,木星の4つの明るい衛星を見つけたのもガリレオ・ガリレイ。彼の名をとって,ガリレオ衛星と名付けられています。この発見も1610年のことです。
木星の衛星や土星の環を観察しながら,およそ400年前,形ばかりの天体望遠鏡を夜空に向けていた天文学者たちの情熱に,思いをはせてみるのも興味深いかもしれませんね。
土星本体のそばには,木星ほど目立つわけではありませんが,いくつかの衛星を見ることができます。望遠鏡で見える土星の衛星の中で,一番明るいのはタイタンとよばれる衛星です。タイタンは木星の衛星ガニメデに次ぐ太陽系で2番目に大きな衛星で,液体の湖の存在が確かめられていて,生命の存在もうわさされている天体でもあります。当夜は,土星のすぐ上(望遠鏡によっては下)方向に,明るく小さな光点で見えています。小型の望遠鏡ではタイタン1個だけかもしれませんが,大きな望遠鏡ではタイタンの他に数個の衛星が見えてきます。
ちなみに木星までジェット機で行くと,およそ60年ほどかかります。一方土星までは130年。いかがですか?思った以上に近いと感じますか?遠いと感じますか?まあ,地球から木星までと土星まで,距離にして2倍ほどの違いがあるわけです。
望遠鏡で木星と土星を覗きながら,太陽系の大きさ,スケールにもぜひ思いをはせてみてください。上に11月11日の太陽系の一部を図示してみました。地球から見て,木星も土星も太陽とは,だいたいですが反対側にありますね。こういう位置関係にある惑星は,夜中に条件良く観察できるため,観望好期にあるといえるんです。
木星と土星の観察が終わったら星空全体を見渡してみましょう。
上図は,18時半頃の北方面の星空を示しています。
観望会の開かれる駐車場側からは,北の方角に博物館の建物があるので,北側の高度の低い星座は見えにくいかもしれません。
ここでは,季節柄,秋の代表的な星座の一つであるカシオペヤ座を見つけてみましょう。カシオペヤ座は,北極星を見つけるときによく利用されるW型のとても見つけやすい星座です。でも,今の時期は立って見えているので,『W』というよりも数字の『3』っぽく見えるかもしれません。
秋の星空の代表選手,ぜひ見つけてみてください。
このカシオペヤ座付近にあるオススメの天体を紹介しておきましょう。
所属はペルセウス座になりますが,このカシオペヤ座のすぐ近くに,見事な散開星団(ほぼ同時期に誕生した星々が比較的近い領域に集まってる天体)が二つピッタリとくっついた天体,二重星団(h&χ) があります。
倍率は低めの方が隣接する2つの星団の全体像が見渡せることもあり,見た印象は良い感じがします。赤っぽい星があちこちに見られ,美しさをいっそう引きだたせています。小型の望遠鏡では,この低倍率が出しやすいものです。ということで,この天体は小さな望遠鏡での観察がオススメです。
※距離は1,400光年
それから,このカシオペヤ座の少し左(東)に,系外星雲(天の川銀河<銀河系>の外にある銀河)である,アンドロメダ座大星雲(M31)があります。M31は,肉眼で見える最も遠い天体でもあります。
倍率は低めの方が全体像がわかりやすいといえます。写真のような渦巻きには見えませんが,見かけの大きさは満月の約5倍ほどもあるとても大きな天体です。天体望遠鏡では渦巻きのうちの中心部がボンヤリと見えます。M31までの距離は230万光年。すなわち,230万年前にアンドロメダ星雲を出発した光が,今ここに届いているわけです。230万年前というと,人類の祖先である原人が現れたとされる頃。旧石器時代の光が今届いているということですね。望遠鏡では期待するほど鮮明には見えませんが,ご自分の目でアンドロメダ星雲からの生の光を体感してください。
※距離は230万光年
M31と同じアンドロメダ座に,美しい二重星(肉眼では1個の星にしか見えないものが,望遠鏡で観察すると接近した二つの星として見える。実際に二つの恒星がお互いに回り合っている天体を『連星』。たまたま同じ方向にあって,二重に見えている天体を『見かけの二重星』といいます。)があります。
名称はアルマク。
2等級の青っぽい色とオレンジ色の色の対比が美しい二重星です。肉眼ではわかりませんが,望遠鏡を使って少し倍率を上げて見てみると,2つの星が分離して色の具合もよくわかってきます。この二重星は実際に2つの恒星が60年ほどの周期で公転し合ってる『連星』です。
似たような色の組み合わせのアルビレオという二重星がはくちょう座にあります。こちらも有名ですが,アルマクの方が,より接近し合ってるせいか色が濃く感じられる気がします。
それでは,秋の星空の南半分です。
注目は,秋空にたった一つの一等星フォーマルハウト。そして秋の四辺形。四辺形とはペガスス座の四角形を指します。ペガスス座は,ほとんど天頂近くに見えています。ただ,2等星と3等星とから構成されるこの四角形を見つけるのは簡単ではないかもしれません。正方形に近い四角形です。探してみてください。ただ,斜めに見えるので,ひし形っぽく感じるかもしれませんが。
ペガススは,お化けくじらに襲われそうになったアンドロメダ姫を救うために現れた勇者ペルセウスを乗せた天馬。空を飛ぶスピードが速すぎるため,下半身を置き去りにしてしまったともいわれる天馬です。そんなわけで,上半身しかありません。
写真では,ペガススは逆さまになっています。右上に2本の前足。右下に首から頭があります。四辺形は,ペガススの胴体の上半分となります。
このペガススの頭の先に大きめの球状星団(恒星が互いの重力の作用で球状に集まった天体)があります。天体の符号はM15。高倍率で観察するとブツブツ感がはっきりしてきます。また,大きな望遠鏡ほど個々の星々に分解して見えてきます。どれも120億歳と高齢の星ばかりで,その数は十万個を超えると言われています。この天体は,大きな望遠鏡で観察してみてください。
※距離は33,000光年
最後に紹介するのは,観望会終盤に東空にギリ見えてくる,おうし座の散開星団すばる(プレアデス星団,M45)です。低倍率で見るとたいへん見応えがあります。キラキラと多くの星々がまたたく様子は,本当に美しいものです。すばるは秋ではなく冬の天体。早い時間帯に,このすばるが見えるようになると冬はもうすぐです。
平安時代の女流作家清少納言が書いた枕草子の中に,このすばるが登場します。
『星は昴(すばる) 彦星(ひこぼし) 太白星(ゆうづつ) よばい星少しをかし…』
超大まかに現代語訳すると,
『星はすばるが一番。その次に彦星アルタイル,宵の明星,流れ星なんかが良い。・・・』
この文は、夜空に見える星や天体の中で,清少納言が美しいと思ったものを順に並べたもの。その第一位にすばるがきてるわけです。昔の人の口コミでも,高評価をもらっていたのかもしれませんね。
この夜間観望会の主役は,観望好期となっている木星,土星の2つの惑星かもしれませんが,月明かりに影響されない夜は,多くの星雲星団がとてもよく見えます。上に紹介した星雲や星団以外にも,見ておもしろい天体がたくさんあります。
また,当館の観望会では様々な天体望遠鏡が準備されています。
大小,大きさの異なる望遠鏡で,また鏡を使った反射望遠鏡とレンズを使った屈折望遠鏡とで,同じ天体でもどう違って見えるのか,ぜひ確かめてみてください。
冷え込みも相当に気になる時期です。防寒にも十分に配慮して,いろいろな天体の観望をじっくりとお楽しみください。
※HP中の星座図,太陽系図は,アストロアーツ社製StellaNavigator12で作成しています。
天体画像は,博物館会員が天体望遠鏡を使って撮影したもので,実際に望遠鏡を覗いたときの見た感じに近いように,一部若干の加工をしてあります。
星空図,説明図等はAdobe製Illustratorで作図しています。
<注>
天体(星雲星団)の名称の頭に付く『M』記号について
フランスの天文学者シャルル・メシエは,数多くの星雲星団を観測してカタログにまとめました。そのカタログに記された110個の天体には個々にM番号が振られて一覧化され,観測に活用されています。『M』は観測者メシエのM。