香川県さぬき市多和助光東30-1(旧 多和小学校)
[イベント] スケジュール:2024/08/10
更新日:2024/08/08
【日時】
2024年8月10日(土)
19時20分:開場・受付開始
19時40分:オリエンテーション
20時00分:観望会開始
21時30分:終了予定
*できるだけ19時30分までに受付できるようにご来館下さい*
【内容】
オリエンテーション後、天候に合わせて天体観望を行います
【予定機材】
大型望遠鏡数台、小型・中型望遠鏡10台程度
【参加費】
大人500円
大学高校生400円
中学小学生300円
就学前児童無料、障がい者手帳お持ちの方無料
【募集組数】20組(70名程度)
【オリエンテーションの内容】
・今夜の星空のシュミレーション
・本日の天体望遠鏡の味わい方
・天体望遠鏡の見方・使い方説明
・夜間天体観望会での事故防止注意事項説明
【雨天・曇天時】
雨天・曇天時は別プログラムにて開催致します。
別プログラムの例
・直径7メートルの大型エアドームによるプラネタリウム
・4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」による星空ツアー
・館内ナイトツアー
・スタッフによる実験やお話など
8月10日夜間天体観望会の予約は申し込み多数のため終了させていただきました*8月4日02時15分
8月10日(土)開催予定の天体観望会の楽しみ方や,観察しておもしろい天体を紹介します。
☆★今回の天体観望会での観察オススメ天体リスト
星座:こと座,はくちょう座,さそり座,ヘルクレス座,
一等星:アークトゥルス,スピカ(食),アンタレス,ベガ,デネブ&アルタイル(七夕の星々),
星の並び:夏の大三角,
星雲:こと座の惑星状星雲M57,
星団:ヘラクレス座の球状星団M13,いて座の散開星団M7,いて座の散光星雲M8,
二重星:アルビレオ,こと座のダブルダブルスター,
その他:天の川
暑い日が続いていますが,夏至からはまもなく2ヶ月が過ぎようとしています。来月は秋分があります。暦の上では,秋はすぐ目の前。日も短くなりつつあります。そうは言っても日の入りはまだまだ遅く,この日の日没は午後6時55分。当観望会の受付は午後7時半,観望会開始が午後8時。空が暗くなって,たくさんの星が見えるようになるまで少々時間がありそうです。
さて,この待ち時間を使って,明るく見えている星探しをしてみましょう。
空がじわじわと暗くなってくると,明るい星から先に見え始めます。
下の図を見てください。博物館前の広場から南方向に体を向けて,空を見上げたときの様子です。
※イメージ化しているので,実際の恒星の位置関係とはかなり違っています。
見えている一等星は,春の星座のうしかい座のアークトゥルス,おとめ座のスピカ。そして夏の星座のこと座のベガ,わし座のアルタイル,はくちょう座のデネブ。さそり座のアンタレスの計6つ。
この上の図のような感じの星空のが見えている・・・はずなんです。
ところが,8月10日の暗くなってから見えてくる夜空では,こんな感じで一等星は5つ。
先の説明図とどこが違うと思われますか?上と下,2枚の図を比べてみてください。
そうです。月があります。
ちょうど,スピカがあるあたりに月があるんですね。月があるのでスピカが見えない・見えにくいというわけです。
月は,地球の周りを公転しているために,(日周運動とは別に)一日に約12度ずつ東へ動いていきます。例えば,当観望会の次の夜に,月はこの夜よりも12度ほど東へ場所を替えています。日周運動で,星々(月も)は東から西へ動いていきます。その上に,月は星空を背景にして西から東へ動いてもいくのです。
ややこしいですね。
ここでポイントになるのは,星空を背景にして月は東へ動いているということ。
この夜も月はわずかずつ東へ動いていて,背景にあるスピカに近寄り,そして重なっていきます(=スピカを隠します)。そして月が通り過ぎると,スピカはまた姿を現す。そんな現象が,この夜には起こるということです。
ただし,です。博物館南西方向には山が迫っているため,山の稜線に近い状態に月は見えている可能性があり,もしかしたら,スピカが隠される瞬間もギリギリで確認できないかもしれませんし,近寄っていく様子しか見えない可能性もあります。(そのときは,残念ということになりますが)そして,月の西(右)側からスピカが顔を出す瞬間は,おそらく,月は山に沈んでいて見えないのではないかと考えます。
下に,スピカが姿を現す後も含めて,途中のいくつかのシーンを図にしてみました。
スピカが月に近づいていくように見えますが,実際は月がスピカに寄っていくんです。そしてスピカを隠してしまう。このスピカが隠される瞬間を『潜入』といい,多和での時刻は午後8時18分頃。姿を現す瞬間を『出現』といい,時刻は午後8時53分頃となります。
このように,月の背景にある天体が月に隠される現象を『星食(せいしょく)』,または『掩蔽(えんぺい)』といい,当夜の現象は,恒星スピカが月に隠されるので『スピカ食』ということになります。このように一等星が月に隠される現象は,ちょっとめずらしい天文現象です。
ということで,スピカの接近と潜入までは,多くの天体望遠鏡が,この月とスピカに向けられることになるような気がします。
それでは,月に近づくスピカを観察しながら,その月も観察しておきましょう。
この夜の月齢は6.0。
※月齢とは,月の満ち欠けの状態を示す数字で,新月から何日経過しているかを表します。新月を0として,新月からの経過日数を数字で表します。大まかには月齢が7前後であれば半月(上弦の月)頃,15前後であれば満月頃,22前後であれば下弦の月の頃というように,月齢で月のだいたいの大きさを知ることができます。
月齢7前後が半月なので,月齢6.0の月というのは半月より1日前の,半月よりも少しへこんだ月ということになります。
では,その月と観察ポイントを少し紹介しておきましょう。
大きさは地球の4分の1強の大きさがあります。月までの距離は,およそ38万km。ジャンボジェット機で行くと,約2週間かかるほどの距離です。月は毎年平均して約4cmずつ遠ざかっています。遠い遠い将来,月は地球からずっと離れて,いつかはいなくなってしまうのかもしれません。
次に観察ポイントです。
まず,望遠鏡で月を観察したときに一番に気がつくのが,黒っぽい模様だと思います。この黒い地域は『海』と呼ばれています。海は,そのほとんどが地下から噴き出した溶岩(玄武岩)でできて,この玄武岩が黒っぽく見せているのです。
それぞれの海には名前がついています。この観望会の夜,見えているのは『危難の海(危機の海)』,『神酒の海』,『豊かの海』,と『静かの海』の半分です。
『豊かの海』 は,直径700kmのやや不規則な形をした海。ウサギの片方の耳にあたります。
『神酒の海』は,直径約300kmのほぼ円形をした海。ウサギのもう一方の耳にあたります。
『危難の海』は,直径約600kmの円形の海。切り立った山脈に囲まれて,内部は冷えた溶岩で覆われています。
『静かの海』は,直径約900km。ウサギの顔(頭)の部分にあたります。
海にはクレーターが少なく平坦。
一方,クレーターが多い地域を陸(高地)といい,高さが2000~4000m級の外輪山的な構造があります。
この夜の月面では,月の表側にある谷としては最大級の『レイタ谷』が見えています。レイタ谷は,長さ509kmと四国2つ分ほどの長さがあり,いくつかのクレーターが連なった構造をしています。
月面を観察する場合,倍率を思いっきり上げてみるのもオススメです。高倍率で見る月面は,ものすごい迫力で,クレーターの内部構造や,谷のようなひび割れた様子などが観察できます。
月を観察したら,星空全体に目を向けてみましょう。
上の円形の星空図は,8月10日午後8時半頃の天空全体の様子を示しています。
※上下左右に記してある方角を下にして見ると,星座早見盤のように扱うことができます。
少し首が痛いかもしれませんが,真上を見上げると天頂からやや左(東)寄りに,夏の大三角が見えています。夏の大三角は,こと座のベガ,はくちょう座のデネブ,わし座のアルタイルの3つの一等星を直線で結んでできる三角形をいいます。思っている以上に大きく感じる三角形かもしれません。
小学4年生の理科で学習すると思いますが,お子様連れで参加されている方はぜひ一緒に見つけてみてください。
見つけるヒントになるのはこと座の一等星ベガ。この3つの一等星の中で一番明るいのがベガ。そして,そのベガはほぼ真上に見えています。(南に身体を向けて)まず,ベガを見つけてから,左上にデネブ,左下の方にアルタイルと見つけるのがわかりやすいと思います。
そして,よくよく見ると(雲の有無や空の澄み具合にもよりますが)ベガとアルタイルの間を北から南へうっすらと天の川が流れているのがわかるかと思います。本当にうっすらと煙のようにです。月明かりがあると天の川は見えにくくなるので,観察は簡単ではない可能性もあります。この夜に,天の川が見えるかどうか,ぜひ確かめてみてください。
七夕のお話に出てくる彦星と織女星が,それぞれアルタイルとベガになります。
7月7日の七夕は,もう過ぎてしまったと思うかもしれませんが,実はそうじゃないんですね。
七夕には,一般に耳にする7月7日の七夕と,もう一つ『伝統的な七夕』というのがあります。この伝統的な七夕というのは,月を基準にした旧暦に基づいたものになります。旧暦は月の満ち欠けにより月日が決まります。七夕は,文字通り七番目の月の夜ということで,月齢が7前後の夜という意味だと考えることができます。すなわち,伝統的な七夕の夜には,必ず月齢7前後の半月に近い月があるんです。
この伝統的七夕は,『二十四節気の処暑を含むか,それよりも前で,処暑に最も近い新月の瞬間を含む日から数えて7日目』と定義されています。ちょっとわかりにくいですね。
昔からの風習的に語られてきた七夕は,この伝統的な七夕の夜の話となります。
その伝統的七夕ですが,今年はいつかというと8月10日。何と当夜!今夜が七夕!
本物の伝統的な七夕の夜であるこの夜,ぜひ七夕の2つの星を見つけてほしいと思います。天の川のほとりに,彦星を織り姫を乗せて川を渡るための舟のごとく,ちょうどいいあんばいに舟形の月があることを確かめてください。
織女星であること座の一等星ベガは,夏の大三角をなす3つの恒星のうち,最も明るい恒星です。ベガというのは『落ちる鷲』という意味で,滑空して獲物を狙う?鷲に見立てたのかもしれません。地球からの距離は26光年。宇宙レベルでは地球と同じ町内会。大きさは太陽の2~3倍,太陽よりもずっと若い星です。そして,12000年後にはなんと北極星になるといわれています。
このベガの周囲には,太陽系にある小惑星帯のようなベルトが見つかっています。このことから,複数の惑星が存在するのではと言われていました。
そこに,一昨年,このベガの周りを公転する(惑星らしき)天体が見つかったとの発表がありました。観測データからは,仮に惑星であるとしたら,それは地球よりもかなり大きな惑星で,太陽と水星間の距離よりももっと近い距離を(ベガを中心に)回っているのではと考えられています。今後のより詳しい観測に期待したいところです。見た目は単なる一つの恒星ですが,惑星が回ってると思いながら,見つめてみてください。ひょっとしたら向こうからも見てるのでは?って,ベガ星系の惑星住人の視線を感じるかも・・。
そして,彦星のアルタイル。地球からの距離は17光年で,とても近い恒星です。大きさは太陽の2倍程度。
おもしろいのは,アルタイルの自転速度です。恐ろしく速い速度で自転しているため,遠心力で赤道部分が膨らんでいます。ちなみに太陽は25日で一回転するのに,アルタイルは9時間で一回転。ムチャクチャ速いですね。そして,今よりもあと1.5倍ほど速かったら,速すぎて自己崩壊してしまうそうです。そんなに慌てて回らなくてもいいのにって思いませんか?
ベガにしても,アルタイルにしても,そういう星なんだと思いながら観察すると,ただの光の点とは違った感じがしてくるものです。
夏の大三角の3つの恒星のうちデネブがあるはくちょう座。過去の観望会案内では,いくつかの星座にまつわる神話も含めて紹介してきました。今年は,ふたご座,かに座,おおぐま座,ヘラクレス座と続けてきていますが,今回は,夏の大三角のデネブがあるはくちょう座とその神話をお伝えしておきましょう。
はくちょう座は,均整のとれた十字の形をしていて,翼を左右に広げた白鳥の姿をイメージしやすい星座です。
はくちょう座の一等星のデネブという名称には,『白鳥の尻尾』という意味があります。デネブの大きさは太陽のおよそ100倍(アルタイルは2倍なんですよ)。明るさは太陽の50,000倍以上。デネブが一日で放射するエネルギーは太陽が140年かけて放射する量と同じ。そんな猛烈な星なのに,夏の一等星の中では一番暗いのは,ベガやアルタイルなどの他の一等星に比べて遙かに遠く(距離1,400光年)にあるためです。
はくちょう座は,(有名な)南十字に対して『北十字』とも呼ばれます。12月末,ちょうどクリスマスの頃でしょうか,夜,西空には,このはくちょう座がまるで十字架のように縦に立つ姿を見ることができるのです。
では,はくちょう座の神話です。
スパルタという国に美しい王妃レダがいました。王様が留守にしていたときのことです。レダが森の中の泉で水浴びをしていると,一羽の美しい白鳥が鷲に追われながら舞い降りてきました。実は,この白鳥は,レダに一目惚れした大神ゼウスが変身した姿だったのです。
自分に近づくためにゼウスが変身したことなど知るはずもないレダは,鷲に追われた白鳥を哀れに思い,抱き寄せかわいがります。
しばらくして,レダは二つの卵を産みます。その卵からは,ふたご座のモデルとして登場するカストルとポルックスが誕生することになるのです。このときの見事な変身ぶりを称えて,星座にしたのがはくちょう座だというお話です。
それではこの夜,天体望遠鏡を向けて楽しめる天体をいくつか紹介していきましょう。
先に天の川が見えるということをお伝えしましたが,夏の天の川の付近には,星の集まりである星団やガスでできた天体である星雲がたくさんあります。その代表的なものを形状別にピックアップしてみました。それぞれ見え方も印象も異なります。大きな望遠鏡や小さな望遠鏡で,見比べしながら『これ,お気に入り!』と思える天体をぜひ一つ選んでみてください。
☆★惑星状星雲:
超新星爆発をせずに一生を終えた恒星が,周囲にガスを放出して,そのガスが中心に残された星からの紫外線に照らされて輝いている天体。
M57・・・こと座にある惑星状星雲。リング状に見えるため,『ドーナツ星雲』とよばれています。距離は2,600光年
☆★散開星団:
ほぼ同時期に誕生した星々が,比較的近い領域に集まってる天体
M7・・・さそり座のしっぽの付近にある散開星団。双眼鏡や小型望遠鏡でもよく見える星団です。
倍率は低めの方が星々が散らばりすぎず,全体像が見渡せることもあり,見た印象は良い感じがします。距離は1,200光年
☆★散光星雲:
比較的広い範囲に広がったガスや宇宙塵が様々な理由で発光して見えている天体
M8・・・いて座の天の川の中にある星雲。写真に写すとピンク色に写ります。散光星雲と散開星団が寄り添っている天体です。距離は3,900光年
☆★球状星団:
恒星が互いの重力の作用で球状に集まった天体。
多くは天の川銀河(銀河系)の周辺部に存在します。
M13・・・ヘラクレス座にある球状星団。
恒星の数は50万個以上。北天で最大サイズの球状星団で,全天一の美しい球状星団ともいわれています。距離は25,000光年
☆★二重星:
二重星とは肉眼で見ると一つの星なのに,望遠鏡で見ると二つの星に見えてきたりする星。
アルビレオ・・・はくちょう座の白鳥のくちばしにあたる星。
アルビレオは,たまたま二つの星が同じ方向に接近して見えているだけの見かけの二重星ですが,おもしろいのはその色の対比。3等級の黄色い星と5等級の青い星が並んで見えています。
ここまで紹介した星雲星団以外にも,見ておもしろい天体がたくさんあります。
例えば
☆M17・・・いて座にある散光星雲,湖を泳ぐ白鳥のように見える・・?
☆M22・・・いて座にある球状星団,M13より迫力があるかも。
☆M27・・・こぎつね座にある惑星状星雲,銀行の地図記号に見えるといううわさ。
☆こと座ε(イプシロン)星・・・二重星が二重になってる?通称『ダブルダブルスター』
ベガの近くにあります。
☆南斗六星・・・北斗七星とどう違う?何座にある?
当夜は,博物館の担当者が望遠鏡を使って導入,そして紹介してくれると思います。望遠鏡を覗きながら,それがどんな天体なのかぜひ質問してみてください。星は観察するだけでなく,その天体がどんな天体であるかを知ることによって,より興味深く感じることができるようになるものです。
また,大きな望遠鏡と小さな望遠鏡とでは見え方が大きく違ったりします。レンズを使った屈折望遠鏡と鏡を使った反射望遠鏡とでも,見え方に違いがある場合があります。倍率の違いによる見え方の違いもあります。同じ天体でも,いろいろな望遠鏡,いろいろな倍率で観察して,見え方の違いを味わってみるのもおもしろいと思います。
それでは,当夜,様々な天体の観望をお楽しみください。
観望会でお会いできるのを楽しみにしています。
<注>
天体(星雲星団)の名称の頭に付く『M』記号について
フランスの天文学者シャルル・メシエは,数多くの星雲星団を観測してカタログにまとめました。そのカタログに記された110個の天体には個々にM番号が振られて一覧化され,観測に活用されています。『M』は観測者メシエのM。
※HP中の星図,星座絵図は,AstroArts社製StellaNavigator12で作成しています。
天体画像は,博物館会員が天体望遠鏡を使って撮影したもので,実際に望遠鏡を覗いたときの見た感じに近いように若干の加工をしてあります。
円形星図,イラスト,説明図等はAdobe製Illustratorで作図しています。