香川県さぬき市多和助光東30-1(旧 多和小学校)
[イベント] スケジュール:2024/11/09
更新日:2024/11/03
2024年11月9日(土)開催の夜間観望会のご案内です。
【日時】
2024年11月9日(土)
17時30分:開場・受付開始
17時50分:オリエンテーション
18時10分:観望会開始
19時30分:終了予定
*できるだけ17時45分までに受付できるようにご来館下さい*
【内容】
オリエンテーション後、天候に合わせて天体観望を行います
【予定機材】
大型望遠鏡数台、小型・中型望遠鏡10台程度
【参加費】
大人500円
大学高校生400円
中学小学生300円
就学前児童無料、障がい者手帳お持ちの方無料
【募集組数】30組(80名程度)
【オリエンテーションの内容】
・今夜の星空のシュミレーション
・本日の天体望遠鏡の味わい方
・天体望遠鏡の見方・使い方説明
・夜間天体観望会での事故防止注意事項説明
【雨天・曇天時】
雨天・曇天時は別プログラムにて開催致します。
別プログラムの例
・直径7メートルの大型エアドームによるプラネタリウム
・4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」による星空ツアー
・館内ナイトツアー
・スタッフによる実験やお話など
参加お申し込み方法
11月9日夜間天体観望会のネット予約受付は終了致しました(2024/11/09 14:30)
☆★今回の天体観望会での観察オススメ天体リスト
星座:ペガスス座,カシオペヤ座,こと座,はくちょう座
一等星:フォーマルハウト,ベガ,デネブ,アルタイル
星の並び:秋の四辺形,夏の大三角
星雲:アンドロメダ座大星雲(M31)
星団:ペルセウス座の二重星団,ペガスス座の球状星団M15,すばる
二重星:アンドロメダ座アルマク,はくちょう座アルビレオ
惑星:木星,ガリレオ衛星,土星,土星の衛星タイタン
月:クレーター,海
11月中旬,季節的には秋も深まってきたという時期。そして来月には冬至を向かえます。
夕空はつるべ落とし。あっという間に暗くなってきます。こういう情景を見ていると,本当に冬近しを感じるのではないでしょうか。
観望会当日の日没は17時3分。天体望遠鏡博物館がある多和地区は山に囲まれているので観望会が始まる18時10分ころには空が暗くなりいくつかの星々や星座が見えてきているかと思います。
まずは,その暗くなった夜空を見上げてみましょう。
上図は,観望会当夜20時前,博物館前の広場から東~南方面に体を向けて,空を見上げたときの様子です。(注)イメージ化したおおまかな図なので,実際の星の正確な位置関係を示すものではありません。
秋の星空には一等星が一つしかありません。そう聞くと寂しい感じに伝わると思いますが,西側半分には,こと座のベガ,はくちょう座のデネブ,わし座のアルタイルの3つの一等星がまだ見えています。この3つの星は『夏の大三角』の星々。冬も近い時期でありながら,まだ夏の星が見えているんですね。そして,秋の夜空の唯一の一等星みなみのうお座のフォーマルハウト。この夜は,その4つの明るい恒星に,超明るく輝く木星,そして土星が加わって,寂しいどころか,意外に華やかな星空となることでしょう。
一番明るく目立っている木星は-2.7等。これは一般的な一等星の10倍以上の明るさです。ただ,観望会開始後しばらくは,まだ東の山に隠れているかもしれません。それでも,時間の経過とともに見え始めることと考えます。
この夜の観望会は,観望会人気NO.1の土星と太陽系最大の惑星である木星,そしてその両惑星に加えて月も加わり,観望会のビッグスターたちが勢揃いといった観望会になりそうな感じでしょうか。
では最初に,太陽系第6番目の惑星である土星の紹介から始めましょう。
土星は,その見映え,神秘感,どれをとっても天体観望会ではダントツ人気を誇る天体です。
地球からの距離は約12億km。地球をビー玉に例えてみましょう。すると土星は,今が食べ頃の梨くらいの大きさで,その梨の大きさの土星が,ビー玉大の地球から1.8kmほど離れたところを公転していることになります。距離感をイメージできそうでしょうか。
土星は,表面に固い地面はなく,水素とヘリウムでできているガス惑星です。だから,土星に下り立って表面を歩くことはできません。
土星を人気者にしている要因となっている環。土星の環は,微小なものから岩塊ほどのサイズの氷をメインに,小石や岩からできていると言われています。土星の環がどうやってできたということについては,いくつかの説がありますが,土星の衛星の一つが土星本体の潮汐力によって,粉々にされたという説が有力のようです。惑星探査機ボイジャーやカッシーニの探査結果からは,この環を構成している氷が,雨のように土星本体に降り注いでいることがわかってきました。あと一億年もすれば,土星の環は消えてなくなるかもしれないということです。
遙か遠い未来,土星の環は消えてなくなる。ところが,もっと近い来年2025年,この土星の環は見えなくなります。
土星の環は年によって傾きが変わって見えます(上図)。7~8年かけて,幅広く見えるときから,幅狭く細く見えなくなるときまで,その見え方は徐々に変わっていきます。来年の2025年は,その環が最も細く見える時期になるんです。
土星の環は,その厚みが数m~数十mと考えられていて,土星本体の直径(116,460 km)と比較すると1/200万。土星本体に比べると非常に薄いわけです。あまりに薄いため,横から見ると認識できなくなる(見えなくなる)んです。この見えなくなる現象を環の消失と呼んでいます。
来年に迫った環の消失に向けて,今季の環の傾きはずいぶんと傾いて,ちょうど団子に串が刺さっているような感じに見えていると思います。
土星本体のそばには,木星ほど目立つわけではありませんが,いくつかの衛星を見ることができます。望遠鏡で見える土星の衛星の中で,一番明るいのはタイタンとよばれる衛星です。タイタンは木星の衛星ガニメデに次ぐ太陽系で2番目に大きな衛星で,液体の湖の存在が確かめられていて,生命の存在もうわさされている天体でもあります。当夜は,土星から土星本体の3倍ほど離れた位置(下図)に,明るく小さな光点で見えています。小型の望遠鏡で見える衛星はタイタン1個だけかもしれませんが,大きな望遠鏡ではタイタンの他にも数個の衛星が見えてきます。
続いて木星。木星は太陽系第5番目の惑星で太陽系最大の惑星。
望遠鏡で木星を覗いてみると,木星本体に数本の縞模様が見えてきます。
木星の大きさは地球のおよそ11倍。そして10時間ほどで一回転(自転)します。地球は24時間で一回転。ということは,地球の11倍の巨大な惑星が地球の2倍以上の速さで自転しているということ。そのため,生じた遠心力で赤道付近が膨らんでいるんです。良く観察してみてください。木星は上下(南北)の縦方向よりも左右(東西)の横方向の方に膨らんで,やや楕円形に見えてるはずです。土星と同様にガス惑星です。
先に,土星を梨に例えてみましたが,木星は梨よりももう少し大きな夏みかんくらい(季節外れですが)。イメージ的には,ビー玉大の地球から1kmほどのところを夏みかんが公転しているという感じです。
木星の縞模様の間には,大赤斑(だいせきはん)という赤っぽい目玉のような特徴的な模様があります。この大赤斑の正体は,高気圧性の巨大な渦巻きだと言われています。大きさは地球がすっぽりと入るくらいサイズの巨大な渦巻きです。当夜は,ちょうど木星が東の空に見え始めてくる頃,この大赤斑が木星の端から見え始めているようです。
また,木星本体の左右に目をやると,4つの小さな光点(下図)が目立って見えていると思います。
この木星の4つの明るい衛星を見つけたのは,ガリレオ・ガリレイで,彼の名をとって,ガリレオ衛星と名付けられています。発見は1610年のことです。
木星の衛星を観察しながら,およそ400年前,形ばかりの天体望遠鏡を,夜空に向けていた天文学者たちの情熱に思いをはせてみるのも感慨深いことかもしれませんね。
上に当観望会時に見える衛星の位置を示していますが,4つの衛星のうちエウロパは観察する時刻によっては木星の影に入っていて,多少見えにくくなっている可能性があります。ガニメデ,カリスト,イオの3衛星は見やすい位置にあります。なお,時間の経過とともに衛星の位置も変わるので,要注意です。上の図がそのままには当てはまらない時間帯もあり得ます。
木星は太陽系最大の惑星であり,土星は2番目の大きな惑星です。それほどの巨大な惑星でありながら,地球からは相当に離れた距離にあるため,天体望遠鏡で倍率を上げても意外に小さくしか見えません。そのため,初めて望遠鏡で木星や土星を覗いたとき,『小さいなぁ!』という印象を持たれる方も多いです。
でも,その小さく見える惑星のどこを見るか,どう見るか意識して観察すると,小さな惑星像の中にもいろいろな気づきをもつことができるはずです
基本的に天体望遠鏡は大口径(レンズや鏡の直径の大きい望遠鏡)ほど,天体の詳しい部分まで明確に見えてくるものです。博物館駐車場に準備された大小いろいろな望遠鏡で木星を見比べて,見え方の違いにも注目してみてください。
また,漠然と望遠鏡を覗くだけでなく,ポイントをいくつか意識して観察してみると面白さは倍増するはずです。
例えば,
○木星なら,縞模様が何本見えるか,縞は真っ直ぐなのかでこぼこなのか。
○土星なら,本体と環の間はどれくらいの隙間があるのか。木星のような縞模様はあるのか。
上の図は写真ではなく,実際に小型の天体望遠鏡を覗いて描いた木星と土星のスケッチです。見え方としてはこの図のような感じに近いかと思います。観望会では自分の目ではどう見えるのか,じっくりと望遠鏡を覗いてみてください。それが観察するということだと考えます。
さて,惑星を十分に観察したところで,今夜のもう一つの主役級の天体である月の方に目を向けてみましょう。
この夜の月は,ほぼ半月に近い形状をしています。
月の膨らみ具合を示す指標の一つに月齢(げつれい)というものがあります。
月齢というのは,新月のときを0として,新月からの経過日数を表す数字です。新月から満月,そしてまた新月に戻るまでの日数は約29.5日。通常は,月の満ち欠けの度合いを示す数値として扱われます。当夜の月齢は9.7。15夜お月さんが満月ですから,その半分の半月の月齢は15÷2で7.5前後。
当夜の月は月齢7.9なので,(7.5≒7.9で)ほぼ半月だと考えることができます。
月の観察をする場合,オススメの注目ポイントは月の欠け際です。ちょうど横方向から太陽光が当たっているため,コントラスト高く,立体感のある見え方をします。
低倍率では月全体が楽しめます。クレーターが数多く見られる高地(山岳地帯)と,クレーターは少なくて平坦な印象の海と呼ばれる部分に目を向けてください。海の部分は黒っぽく,クレーターが少なく平坦な感じに見ることができます。
一方,高地は高倍率で観察するのが良いでしょう。多くのクレーターの輪郭部は,愛媛県の石鎚山や徳島県の剣山から富士山級の高さを誇ります。迫力で迫る月面をぜひ味わってください。
月の観察が終わったら,今度は星空全体を見渡してみましょう。
上図は,18時半頃の北方面の星空を示しています。
観望会の開かれる駐車場側からは,北の方角に博物館の建物があるので,北側の高度の低い星座は見えにくいかもしれません。
ここでは,季節柄,秋の代表的な星座の一つであるカシオペヤ座を見つけてみましょう。カシオペヤ座は,北極星を見つけるときによく利用されるW型のとても見つけやすい星座です。でも,今の時期は立って見えているので,『W』というよりも数字の『3』っぽく見えるかもしれません。
秋の星空の代表選手,ぜひ見つけてみてください。
このカシオペヤ座付近にあるオススメの天体を紹介しておきましょう。
所属はペルセウス座になりますが,このカシオペヤ座のすぐ近くに,見事な散開星団(ほぼ同時期に誕生した星々が比較的近い領域に集まってる天体)が2つピッタリとくっついた天体,二重星団(h&χ) があります。
倍率は低めの方が隣接する2つの星団の全体像が同一視野に見渡せることもあり,見た印象は良い感じです。あちこちに赤っぽい星が見られ,美しさをいっそう引き立たせています。小型の望遠鏡では,この低倍率が出しやすいものです。というわけで,この天体は小さな望遠鏡での観察がオススメでしょうか。
※距離は1,400光年
そして,このカシオペヤ座から北に向かって少し右(東)に,系外星雲(天の川銀河<銀河系>の外にある銀河)である,アンドロメダ座大星雲(M31)があります。
倍率は低めの方が全体像がわかりやすいといえます。見かけの大きさは満月の約5倍ほどもあるとても大きな天体です。写真のような渦巻きには見えませんが,天体望遠鏡では渦巻きの中心部がボンヤリと見えます。M31までの距離は230万光年。すなわち,230万年前にアンドロメダ星雲を出発した光が,今ここに届いているわけです。230万年前というと,人類の祖先である原人が現れたとされる頃。旧石器時代の光が今届いているということですね。M31は『肉眼で見える最も遠い天体』です。望遠鏡では期待するほど鮮明には見えませんが,ご自分の目でアンドロメダ星雲からの生の光を体感してください。
※距離は230万光年
M31と同じアンドロメダ座に,美しい二重星(肉眼では1個の星にしか見えないものが,望遠鏡で観察すると接近した二つの星として見える。実際に二つの恒星がお互いに回り合っている天体を『連星』。たまたま同じ方向にあって,二重に見えている天体を『見かけの二重星』といいます。)があります。
名称はアルマク。
2等級の青っぽい色とオレンジ色の色の対比が美しい二重星です。肉眼ではわかりませんが,望遠鏡を使って少し倍率を上げて見てみると,2つの星が分離して色の具合もよくわかってきます。この二重星は実際に2つの恒星が60年ほどの周期で公転し合ってる『連星』です。
似たような色の組み合わせのアルビレオという二重星がはくちょう座にあります。こちらも有名ですが,アルマクの方が,より接近し合ってるせいか色が濃く感じられる気がします。
それでは,秋の星空の南半分です。
注目は,秋空にたった一つの一等星フォーマルハウト。そして秋の四辺形。この四辺形はペガスス座の四角形を指します。ペガスス座は,ほとんど天頂近くに見えています。ただ,2等星と3等星とから構成されるこの四角形を見つけるのは簡単ではないかもしれません。正方形に近い四角形です。探してみてください。もしかしたら斜めになっているので,ひし形っぽく感じるかもしれませんが。
ペガススは,お化けくじらに襲われそうになったアンドロメダ姫を,救うために現れた勇者ペルセウスを乗せた天馬。空を飛ぶスピードが速すぎるため,下半身を置き去りにしてしまったともいわれる天馬です。そんなわけで,ペガスス座は上半身しかありません。
写真のペガススは逆さまになっています。右上に2本の前足が斜め右上に伸びています。右下に首から頭があります。この四辺形は,ペガススの胴体の上半分です。
ペガススの頭の少し先に,大きめの球状星団(恒星が互いの重力の作用で球状に集まった天体)があります。天体の符号はM15。高倍率で観察するとブツブツ感がはっきりしてきます。また,大きな望遠鏡ほど個々の星々に分解して見えてきます。どれも120億歳と高齢の星ばかりで,その数は十万個を超えると言われています。M15は,スライディングルーフ内の大きな望遠鏡で観察してみてください。
※距離は33,000光年
最後に紹介するのは,観望会終盤に東空に見えてくる,おうし座の散開星団すばる(プレアデス星団,M45)です。すばるは,小型の天体望遠鏡の低倍率で見るのがオススメです。キラキラと多くの星々がまたたく様子は本当に美しいものです。すばるは秋ではなく冬の天体。早い時間帯に,このすばるが見えるようになると冬はもうすぐです。
平安時代の女流作家清少納言が書いた枕草子の中に,このすばるが登場します。
『星は昴(すばる) 彦星(ひこぼし) 太白星(ゆうづつ) よばい星少しをかし…』
大まかに現代語訳すると,
『星はすばるが一番。その次に彦星アルタイル,続いて宵の明星,そして流れ星なんかが良い。・・・』
この文は、夜空に見える星や天体の中で,清少納言が美しいと思ったものを順に並べたもの。その第一位にすばるがきてるわけです。昔の人の口コミでも,高い評価をもらっていたのかもしれませんね。
この夜間観望会の主役は,観望好期となっている木星,土星の2つの惑星と月かもしれませんが,上に紹介した星雲や星団を含めて数多くの見て楽しめる星雲星団があります。
当夜は,博物館の担当者が様々な望遠鏡を使って導入,そして紹介してくれると思います。望遠鏡を覗きながら,それがどんな天体なのかぜひ質問してみてください。星は観察するだけでなく,その天体がどんな天体であるかを知ることによって,より興味深く感じることができるようになるものです。
山の中です。冷え込みも相当に気になる時期。防寒にも十分に配慮して,いろいろな天体の観望をじっくりとお楽しみください。
それでは,観望会でお会いできるのを楽しみにしています。
※HP中の天体画像は,博物館会員が天体望遠鏡を使って撮影したもので,実際に望遠鏡を覗いたときの見た感じに近いように,一部に若干の加工をしてあります。
木星と土星画像は,小型望遠鏡で覗いてデジタルスケッチしたものです。
星空図,説明図等はAdobe製Illustratorで作図しています。
<注>
天体(星雲星団)の名称の頭に付く『M』記号について
フランスの天文学者シャルル・メシエは,数多くの星雲星団を観測してカタログにまとめました。そのカタログに記された110個の天体には個々にM番号が振られて一覧化され,観測に活用されています。『M』は観測者メシエのM。