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五藤光学20㎝屈折赤道儀とGS8S型プラネタリウム(熊本県立教育センター)

ブランド: 五藤光学研究所
光学系: 屈折
口径: 200mm
架台形式: 赤道儀
寄贈地:
寄贈者:
展示場所:
収蔵年:
備考: プラネタリウムES8型と同時引取

光学的性能
有効径:200㎜(アクロマートレンズ フルコーテイング) 焦点距離:2400㎜ 分解能:0.58秒
集光力:816倍 極限等級:13.3等星
架台部
ドイツ式赤道儀 水晶発振式追尾装置 赤経電動クランプ
同架望遠鏡
50㎜ファインダー(12.5倍) 80㎜ガイディングスコープ(焦点距離1200㎜) アストロカメラ?
付属品
星用直視分光器/三頭レボルバー/ソーラープロミネンスアダプター/明視野照明装置/ハーシェルプリズム/天頂プリズム/付属品収納ケース


この五藤光学研究所製20㎝屈折赤道儀とGS8S型プラネタリウムは、熊本県山鹿市にある熊本県立教育センター理科棟屋上ドーム内に設置(1972年~)さていたものです。すでに実使用は終えていたようですが、2016年春の熊本・大分大地震にて建物が損傷し、2016年8月30日熊本県のホームページに競争入札にて売却されることが告知されました。11月からは取り壊し工事が開始される可能性があり、それまでに移設しなければなりません。

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入札は9月16日金曜日に熊本県山鹿市にある熊本県立教育センターにて行われました。この日は平日のため会員が現地に出向くことができず、技術顧問の吉川氏に代理出席してもらいました。入札の結果、幸いにも、落札できることになりました。落札後、地元のTV局の取材があり、地震で取り壊すことになった施設から天体望遠鏡とプラネタリウムは天体望遠鏡博物館に移設されて再活用できるようになったことが放送されました。放送後、視聴者から熊本県立教育センターに電話があり、「地震で傷ついた施設から望遠鏡が救出され再活用されることは明るいニュースです」とお言葉を頂戴したそうです。

ドームは6階にあり、ドームスリットの開閉ができるかどうか不明でした。またエレベーターも使用できません。そのため搬出計画立案のためには詳細な現地調査が必要でした。10月14日大分県に出張する機会のある会員がレンタカーで熊本に向かい半日かけて調査を行いました。

スライド2

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スライド3

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ドームスリットは開閉ができる可能性がありますが、回転はできないことがわかりました。

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プラネタリウムは70席の本格的なタイプです。コントロールボックスも含めるとかなりの大きさになります。天体望遠鏡ドームと違って、プラネタリウムドームは開閉できませんから、搬出はすべて手作業になります。またプラネタリウムは精密機械であり、分解すると精度の復元ができない可能性が高くなります。できるだけ分解せずに搬出・輸送しなければなりません。そうなるとまずは通路、ドア幅が搬出可能な大きさかどうかを調べる必要があります。

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エレベーターは使用できない状態でしたので、階段で1階まで下ろすか、屋上にだしてクレーンで下ろすかになります。屋上にだすためには、有効幅74㎝、高さ183㎝のドアを通らなければなりません。

これらの調査の結果、22トン対応クレーン、4トンユニツククレーン付きトラック、パワーゲート付アルミバンの3台の車両と各種工具、7名の人員で対応することが決まりました。

10月27日金曜日、翌日の移設に向けて、先行の2名(技術者)がプラネタリウムの配線を取り外し、ドームスリットの開閉ができるように修理を行いました。

同日、20時、香川からトラツク2台に5名が乗車し出発。小雨の中、愛媛県の八幡浜港に向いました。翌0時20分発のフェリーに乗船3時過ぎに別府港に到着。5時まで仮眠し、熊本へ高速道路利用で8時に現地に到着しました。熊本は晴天でした。

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10月29日土曜日8時、休日にもかかわらず熊本教育センターの職員の方が立ち会っていただけました。
ご挨拶後、全員で施設内と作業手順を確認し、8時すぎから作業を開始しました。

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足場・脚立・工具類をクレーンで5階ベランダにつり上げます。

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プラネタリウムは重心が上部に近いところにあり倒れやすく、本体そのものを持つ訳にもいきません。細いフレームを持って下げていくことにしました。その作業を安全に行うために足場を組み、続いて養生のため本体に毛布をかけました。

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箱を利用して階段をつくり、一番ずつ下げていきます。

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プラネタリウム室からの搬出はできましたが、問題はベランダに出すためのドアです。あきらかに、このままでは出せません。

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ドアが最大限に開くようにドアクローザーを外します。

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斜めに倒して出すしか方法はありません。本体にふれないように出すのに苦労しました。

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予定通り午前中にプラネタリウムのベランダへの搬出に成功しました。7名揃って安堵の記念撮影です。

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木製台座やコントロールボツクス関係を搬出し、電線も取り外します。

これで午前中の作業は終了です。

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午後からは20㎝屈折赤道儀の分解・搬出です。赤経クランプは電磁ロック、赤緯クランプは手動になっている赤道儀です。モータードライブはドライブシャフトを使った外付けではなく、極軸南側端に内蔵されています。15㎝用赤道儀を一回り大きくしたサイズイメージです。

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ファインダーを取り外した後、8㎝F15のサブスコープを外します。対物レンズは有効口径80㎜焦点距離1200㎜の2枚玉アクロマートレンズです。ほこりなどが散見されますがクリーニングすれば充分実用になると思われます。フード内塗装は劣化しており再塗装が必要な状態です。

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アストロカメラ?を外します。スペツクは未調査です。

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メインスコープの口径200㎜、焦点距離2400㎜アクロマートレンズをセルごと取り外します。前玉前面だけでなく前玉と後玉の間にもほこりなどがあるようです。スペーサーも腐食しているように見受けられます。本格的なメンテナンスを行う予定です。

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鏡筒の対物レンズ側を取り外すための準備です。バランウウェイトを2枚外します。つぎに鏡筒を外した瞬間にバランスが崩れてバランスウェイト側に回転するのを防ぐため、ウェイトシャフトをクレーンで緩めにぶら下げておきます。また鏡筒接眼部側も不用意に回転しないようにクレーンで緩めにぶら下げておきます。万一に備えての安全対策です。

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鏡筒の対物レンズ側を取り外します。対物レンズ自体はすでに外している状態ですので2人で支えられる重さでした。

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鏡筒内側にナットがありますので、対物レンズを外さずに、鏡筒をはずすと、外れたナットが対物レンズに落下することになります。通常はこの位置からはずすのではなく、フランジから外すのですがボルトが部品と干渉としてとても取り外しにくい状態でしたので仕方なくここから外しています。

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鏡筒を回転させ接眼部を下にします。ウェイトシャフトから残していた1個のバランスウェイトを外し、シャフトも取り外します。

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クレーンを使ってポール上部と下部に分離したいのですが、取り外すことができません。わずかに何かがひっかかっているようです。

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地震のせいかコンクリートが破壊されており、アンカーボルトが抜けてしまう状態であることがわかりました。もう少し地震で揺られていたら倒壊していたかもしれません。

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ポール上部からの分離をあきらめ、ポールベース部からの分離に切り替えました。

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ようやく分離に成功しました。おもわず笑顔になります。

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ドームスリットにあたらないようにロープ操作しながら慎重につり上げていきます。

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青空の中、20㎝屈折赤道儀が浮かんでいます。

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着地しました。

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結構、難しいのが横倒しに置くことです。クランプなどに負荷がかからないようにするには、望遠鏡の構造をよく知っていないとできません。これまでの大型望遠鏡輸送の経験が活かされました。

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ベース部の積み込みです。ベースそのものは壊れるような部品ではありませんが、輸送中にずれて、他のパーツを破損させるおそれがあります。そのため荷台の最前部に積み込みます。

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4トン車への積み込み完了です。

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プラネタリウムのパーツなどをクレーンで下ろし、アルミバンに積み込みます。パワーゲート付きなので体力消耗せずに重量物を次々と積み込めました。

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プラネタリウムを積み込みます。

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アルミバンも積み込み完了です。

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施設内の後片付けを行い、午後4時すぎにこの日の作業を終えました。この日は山鹿市で宿泊しましたが、前日深夜からの移動と朝からの作業でしたので、夕食後、午後9時くらいには全員寝てしまっていました。

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翌30日日曜日、午前7時前に山鹿市を出発し、午前9時45分の別府港発のフェリーで八幡浜港に向かいます。八幡浜港に12時5分に到着し高速道路で移動、午後4時まえに天体望遠鏡博物館に帰還しました。博物館で待っていたメンバーといっしょに、まずはプラネタリウムから荷下ろししていきます。

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パレットとハンドリフターを利用して、大型望遠鏡展示棟に搬入します。

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コントローラー関係のパーツを搬入します。

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プラネタリウムを仮設置します。

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20㎝屈折赤道儀を下ろします。

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大型望遠鏡展示棟に搬入します。

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日暮れになり、棟内が暗くなってきたので、設置場所にそのままの状態で置いておくことにしました。


2016年11月5日土曜日、組み立てを行いました。

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架台を手動クレーンを使って立ち上げていきます。(撮影 新谷様)

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鏡筒接眼部側を付けたままで、まっすぐ立てるのはなかなか難しく時間がかかりました。(撮影 新谷様)

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ようやく脚部ベースに差し込めました。組み立て中にバランスがくずれないようにするため、バランスウェイトシャフトを取り付けます。(撮影 新谷様)

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スタッフが組み立て作業に疲れた頃、ふもとから博物館まで走ってやってきたという元気いっぱいの来館者に「組み立て体験してみませんか」と声をお掛けしたところ、快く引き受けて下さいました。重いバランスウェイトを取り付けるのは大変なのですが、みごとに取り付けていただけました。(撮影 新谷様)

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アンカーボルトの穴開けも行って下さいました。アンカーボルト締めまでがんばっていただきました。ありがとうございました。(撮影 新谷様)

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さすがに全部お願いするわけにはいけませんので我々も行います。アンカーボルト作業完了後、対物レンズ側の鏡筒を取り付けます。

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組み立てに合わせてさらにバランスウェイトを取り付けていきます。

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アストロカメラを取り付け、鏡筒の前後バランスをとるカウンターウェイトの調整や、バランスウェイトの調整をしていきます。8㎝サブスコープと5㎝ファインダーはメンテナンスのため後日の取り付けになります。

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一番、手前が20㎝屈折赤道儀です。右に設置している望遠鏡は15㎝屈折赤道儀群です。

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大型望遠鏡展示棟内ではこの20㎝屈折赤道儀が屈折での最大口径になります。この日は、ボランティアの参加もあり鏡筒外装などの清掃も行えました。みなさんありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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