香川県さぬき市多和助光東30-1(旧 多和小学校)
ブランド: | ニコン(日本光学工業時代) |
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光学系: | 屈折 |
口径: | 110mm |
架台形式: | 赤道儀 |
寄贈地: | 滋賀県 |
寄贈者: | 滋賀県立彦根東高校 |
展示場所: | |
収蔵年: | 2015年以前 |
備考: | 昭和8年製 |
この望遠鏡は、日本光学工業(現ニコン)が昭和8年に製造した11cm屈折赤道儀式望遠鏡です。彦根地方気象台で観測使用された後、昭和44年に 彦根東高校 に寄贈されました。
彦根東高校はスーパーサイエンスハイスクール(SSH校)の中でも特にその中核となって地域の科学力を向上させるコアSSH校の指定指定を受けるなど理数系教育の先進校です。彦根東高校の天文教育としては昼間に観測ができるHα太陽望遠鏡等が整備されており、授業だけでなく、SS部地学班が太陽活動の観測を行なっています。
この望遠鏡が製造されて78年、彦根東高校に設置されて42年が経過しています。さすがに再整備の必要が発生しています。また天文ドームもスリットの開閉ができない状況です。
現在、東彦根高校では校舎耐震化工事が行われており、使用されなくなったこの望遠鏡をどのようにするか検討されました。その結果、歴史ある貴重な望遠鏡を活用できる施設として天体望遠鏡博物館への寄贈が決定しました。
当日は、彦根東高校新聞部の取材対象にもなりました。ここに掲載する写真も新聞部の生徒さんに撮影してもらったものが多数含まれています。
ドームは3階建て一部4階建て校舎の屋上に設置されています。スリット開閉ができない状態ですが、雨漏りはなく、昭和8年製の望遠鏡と思えないほど、保存状態は良好でした。
まずは、鏡筒の取り外しです。回収の2週間前から彦根東高校の北川先生がネジに潤滑剤を入念に処理して下さっていましたので、苦労することなく、作業が進みました。
11センチ鏡筒部をドームから4階屋上に搬出します。
続いて、赤道儀本体の取り外しです。現代の10㎝~12㎝級望遠鏡では考えられないくらいの重量と重厚感に溢れた赤道儀です。また逆に昭和8年にこれほど美しいデザインの赤道儀が製造されていたことにも驚きます。
戦後になってから、追加されたと思われるモータードライブ部分を取り外し、続けて架台上部を分解します。
架台下部(通称:チューリップ)をコンクリートベースから取り外してドームから取り出します。想像以上に重いことに一同、驚きを隠せませんでした。一番、重いこのチューリップは体力を消耗する前が良いだろうという判断で最初に運ぶことにしました。
最初の難関は5階から4階への階段です。狭いため、ポジションを自由にとることができません。人員の安全と、機材の損傷を防ぐために一段ずつゆっくりと降ろします。
4階屋上まで降ろすことができました。4階の階段室に入れて、4階から1階まで、どうやって降ろすか、それぞれのアイデアを検討した結果、時間はかかりますが、安全を第一にし、一段ずつ階段を降ろしていくことになりました。
階段1段ずつですので、一回に進む距離は35㎝くらいです。1階分、降りるには踊り場を含めて20段の階段があります。4階から1階に降りるにはこの作業を20段×4階で80回繰り返します。
階段おどりばは、台車が利用できます。これがよい休憩になりました。
1階まで降ろし、車への積載も無事できました。
続いて赤道儀本体です。バランスウエィトを取り外すことができなかったので、ずしんと感じる重さのままでの移動となりました。持ちやすくするために、足場用の鉄パイプにぶら下げています。
持ちやすくするということが、重量物移動作業を行うのに大切だということを再認識しました。
赤道儀本体、鏡筒、鏡筒カウンターウエイト、アイピースなどの積み込みもできました。
アストロ光学のL6赤道儀など小型赤道儀2台の寄贈もありました。
すべての機材の積み込みが終わってから、新聞部の生徒さんからの取材を受けました。彦根東高校新聞部は全国高校新聞年間紙面審査賞最優秀賞を5年連続で受賞するなど活発な活動をされています。この日も熱心な質問を受けました。最後に皆さんと記念撮影しました。撮影して下さったのは教頭先生です。
2013年10月19日 天体望遠鏡博物館 開館予定地のさぬき市 旧:多和小学校に搬入致しました。
搬入した建物は、元々は屋内プールで、今年の9月に望遠鏡の大展示室に使えるようにプール部分を埋め立てたものです。校舎の耐震化と改装工事が終わるまではここで保管されます。
2016年1月開館のときに観望使用できるように設備を進める予定です。
戦前の昭和8年製にすでにこれほど美しい望遠鏡をつくる技術があったことに感銘