香川県さぬき市多和助光東30-1(旧 多和小学校)
口径:250㎜ 焦点距離: ドイツ式赤道儀
この望遠鏡は、香川県東部地区の天文アマチュアの草分けとも言える田村兄弟の弟、田村二也(かずや)氏が1970年ころに購入したものです。当時のアマチュア用としては最大クラスの物で、主鏡は25㎝の木辺鏡です。
田村二也(かずや)氏が他界されてからは、田村二也様の奥様の妹が嫁いでいた高松市の岡村様宅で岡内様御夫婦により長年にわたり大切に保管されていました。岡村様ご自身も熱心な天文愛好家で、現在も「日本宇宙少年団香川小惑星分団」を組織し、少年少女の宇宙、天文、科学教育に努められています。
2013年4月27日、天体望遠鏡博物館の開設準備活動を知った岡内様から寄贈されました。
田村兄弟の兄、田村宦(つかさ)氏は、1970年代に香川県東かがわ市西村の旧:田村医院に私設天文台を建築しました。天文台は徳島市と高松市を結ぶ幹線道路国道11号線に面した敷地にあり、鉄筋コンクリート2階建て屋上に銀色に輝く天文ドームはとても目をひきました。
田村二也氏は、一時期この田村医院に兄弟でお住まいになっていて、兄弟で天体観測をされていたそうです。本機は二也氏が結婚し、独立されてから購入されたそうですから、旧:田村医院の天文ドームに設置されていた望遠鏡とは異なると思われます。
光学系と赤道儀駆動回路の修復をはかり、活用させていただきます。
*2016年10月 田村兄弟の兄、故:田村宦(つかさ)氏のご子息、田村隆一様(高松市庵治町 田村内科クリニック院長)から田村兄弟ゆかりの数多くの天体望遠鏡の寄贈がありました。こちらの望遠鏡についてはこちらをご覧下さい。→田村宦(つかさ)氏の望遠鏡
本機の修復記録
【光学系】
2015年8月木辺成麿氏研磨の25㎝主鏡の再蒸着をヨシカワ光器研究所さんに依頼して行いました。
神々しいほどの艶やかな鏡面です。
漢字で 木辺成麿 作 の銘が彫刻されています。
ガラス面にこれほどの達筆で彫刻されていることに驚きました。
この鏡は2016年5月現在 当館2階第3展示室に中村要氏、星野次郎氏、苗村敬夫氏の鏡とともに展示されています。
【赤道儀駆動系】
コントロールボックスなどがない状態ですので、新規製作予定です。
木辺成麿氏について
1912年に滋賀県の真宗木辺派本山錦織寺に生まれ。
旧制滋賀県立膳所中学校(現 滋賀県立膳所高校)にすすみ、京都帝国大学を卒業しました。
幼いころから天文に興味があり、後に中村要に出会い反射鏡研磨の大家になります。
1969年木辺派門主に就任後も反射鏡・レンズ研磨を行い「レンズ和尚」と呼ばれることもありました。
戦前から1970年代頃までの30㎝~60㎝の西村製作所製の大口径反射鏡には木辺成麿氏研磨のものが多く使われています。
現在では「木辺鏡」として天文愛好家にとっては垂涎の鏡となっています。
1962年に研磨された15㎝屈折望遠鏡用レンズは西村製作所製屈折赤道儀に組み込まれて、滋賀県立膳所高校に設置されていました。現在この15㎝屈折赤道儀は当館にて保管展示されています。